2012-11-15

Aくんの話 続編

以前Aくんの話をしました。


(植物の山 かわいい)


あれからというもの、しょっちゅうとは言えないまでも
時々彼の様子を見に病院へ足を運びました。


外出許可が出たと思えば、Aくんは食事で出されたプラスチックの容器を自分で割り、それでもう一度手首を切ろうとしたらしい。しかしプラスチックはプラスチック。結局事なきを得た。

そのことがあって、彼は一定期間外出許可を剥奪された。
彼自身なぜそんなことをやってしまったのか覚えていないらしい。
なんてこと(*o*)




しばらく経って、Aくんはアパートを引き払い病院に引っ越すことにした。(入院ではなく完全入居ということ)それで私たちも掃除と引っ越しの手伝いにアパートへ向かった。特別外出許可が出たAくんは感情さえ特に表に出さないもののやはり嬉しそうだった。


アパートは事件以来血だらけだったそう。
だけどAくんの友人Fが大分掃除を進めてくれていたため、私は数滴の血の跡を見るだけだった。




Aくんという人は本当に孤独である。
私はそんな彼に同情をしている。

しかし、その日 私は彼に少し失望させられた出来事が起きた。



相方とFくんが、Aくんの荷物を運ぶため車でアパートを去っていった。残った私とAくんは掃除を続けていた。と、その時。

「マキコ、1ユーロくれないか」と一言。
(Aくんは現在銀行のカードも小銭も持っていない)

何故?何に使うのかと私が訪ねると
少し沈黙が続いて「ビール・・・」とだけ言った。




私はこのとき プツンときた。



彼はアルコール依存症である。しかも重度の。
事件以来当たり前だが病院で彼はお酒を飲んでいない。よくやっている。

お酒を絶つのは簡単ではない。世の中にどれだけそれで苦しんでいる人がいるだろうか。本人だけでなく家族だって、辛い思いをしているだろう。複雑な問題だ。

私はAくんにビールを飲ませるわけにはいかない。アル中を克服すれば、彼は仕事が見つかるかもしれないし、社会復帰出来るだろう。もちろん達成するには険しい道になるだろう。しかしだからこそ、相方と彼を訪問して本を運んだり食べ物を持って行ったりしたのだ。

なのに、その本人から「ビールを買うためのお金をくれ」と言われたのだ。





Aくんは、甘いよ。



私は幻滅したし、そして悲しかった。
彼は自分を悲観・美化している面があるのかもしれない。でも彼を取り巻く全てがそうさせてしまったのかもしれない。それも含めて、本当に悲しい。



「それは出来ない」
 と返事をすると、彼は無言で部屋を出て行き隣の住人に同じ質問をした。

「1ユーロくれ」と。



あとで分かったことだが、彼はその前日にも同じことをした。隣の住人は1ユーロをハイと渡してしまったそうだ。彼はしめたとばかりにビールを即行1本買い、飲み干したそうだ。






何かにつけて彼はよく 私と相方に
 「きみたちは運が良い」と言う。

私はそれがよく分からない。運も大事だけど、それだけで人生は成り立ってないと思うから。Aくんは自分の境遇を全て運のせいにしたいのかもしれない。それほど自分でもどうしようもないのだろう。でもそれは違うよAくん。




彼の辛さを、私はほんの1割も分かってあげられないのかもしれない。彼のどうしようもない絶望的な状況を、いつもヘラヘラ笑ってる私には理解出来ないのかもしれない。

だけど、分かってあげられるよう努力をしている。
だから彼にも私たちのことを分かって欲しいのだ。


それだけ

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